□題名 コラム「麺を喰う」
□記載送信場所 東京

▼スパゲッティー

予算と燃費の都合と普段は米を大量に炊いて米食を基本としているが、たまには麺が食べたい。なので米が無くなると必ず一日スパゲッティーの日を入れることにしている。スパゲッティーの最大の利点は安いことだ。500g138円としても米よりはだいぶ安いし、少量でも気楽に購入できるのが良い。お決まりのメニューはトマトホールを使ったミートソース。最近はバジルを入れることを覚え、とろけるチーズに薬味のかいわれ大根を振りかけて食べている。かいわれ大根はパセリより安くて手軽でおいしい。
麺は太めを買い、固めにゆでるのがコツ。芯が少し残るくらいで余熱を使うのがイタリア流とか。最近ようやくこのゆで方がわかるようになってきた。
ゆで汁は基本的には捨てるけど少しだけソースに混ぜてもおいしい。単なる塩味だけどそば湯の様に直接飲んでも悪くない。とろみがついていて体が芯から暖まる。

▼稲庭うどん

秋田県角館で稲庭うどんを食べた。中に穴があいたうどんと聞き、食べずにはおれなかった。
穴と言われたからマカロニの様なの構造かと思ったが、そんなわけではない。むしろ蓮根みたいに不規則に穴があき、ちょっとすかすかしている感じ。しかしここが稲庭うどんの醍醐味。さっとゆで上がり、味もしみて食感が良い。腰のあるしっかりとした麺なのに、柔らかくてするすると入っていった。かつお出しも絶妙だった。

▼水沢うどん

友人の紹介で群馬県伊香保町で水沢うどんを食べた。そばだけでなく、うどんも冷やして食べるのが基本。暖かいうどんは伸びるのであまり食べてほしくないそうだ。ちなみに市販のうどんには「伸びなくなる」添加物が入っているとか。何でもかんでも便利で恐ろしい時代だ。
水沢うどんはうどんの王道を行くようなシンプルなおいしさだった。表面がプリプリしつつ中には腰がある。 「うどんだなぁ。」としみじみ味わえる一品だ。
しかし、しみじみ味わっている暇は無い。冷や麺でも5分間で伸び、まずくなってしまうからだ。もっとも私にとっては五分過ぎても十分おいしかったけど、プロに言わせたら全然ダメらしい。伸びたら捨てるくらい厳しいそうだ。
おいしいうどんを打つにはうどん粉の配合と良い水、そして最高の塩が必要という。良い塩と言うからやっぱり赤穂か伯方の海塩かと思ったら岩塩や死海の塩まで研究しているそうだ。時代と共に味も食材も変わる。そして今や国境は無い。世界の味を求めて国内や地元だけにこだわらないとは頼もしい。
水沢うどんはゴマの薬味が地味に良かった。もちろん舞茸の天ぷらも。何気ないものが土地の色を出し、味わい深い物にしてくれる。ごちそうさまでした。

▼宮古そば

福島県山都町宮古までそばを食べに行った。ここは喜多方の隣町でとんでもない山奥だった。一応名前だけ国道459号だが、林道と呼んでもいいくらい細くて険しい道。腹を空かせないとと思い、食を切りつめたために辛い上り坂になってしまった。
宮古の名物は水そばだ。食べてびっくりの「素」そば。湧水で締め、水切りしたそばは椀に入れられ、それを湧水だけにつけて食べる。本当にそばだけの味が広がり、実においしかった。
実はこの水はただの湧水なのだが、この湧水がただでない。極上絶品だった。今までおいしい水は各地で飲んできたけど、宮古の水はまた格別に良かったと思う。北海道で言えば羊蹄山の麓の京極町や倶知安町など火山の麓にはうまい水があると決まっているが、宮古は火山性のまろやかな水と違い、きりりと引き締まった凛とした水だった。たとえて言うと日本酒の味。ちびちびとやりながら水を味わえるなんて驚きだ。
脱線が多くなってしまったが、そばはもちろんおいしかった。当たり前の事なのだが、そばを臼でひいて打ってゆでて締めたものを食べている、その事が直接的に感じられるような味だった。それから忘れられないのがそば湯。こんなに甘くて香り豊かな暖まるそば湯は初めて。本末転倒だが、そばよりもおいしいくらいだった。

▼喜多方ラーメン

麺を買い自炊で味わったが、なかなかおいしかった。太い麺としょうゆ味が基本で、自分の好みともマッチして最高の一品となった。しかし聞いてみたら喜多方ラーメンの麺をおみやげにしても案外おいしくないと思う人が多いそうだ。
原因はもちろん水にある。「水そば宮古の隣町、蔵は日本酒冴えわたる」なのだ。
私は西会津町の山奥にテントを張り、宮古・日本酒の湧水でラーメンをゆでた。麺がプリプリしてスープが凛としている。さすがは日本酒の湧水。何を作ってもうまいんじゃないだろうか。

▼最後にわんこそば

岩手県花巻市でわんこそばにチャレンジした。わんこそばは盛岡が有名だが元祖は花巻と聞いたから。胃拡張の低燃費チャリダーは大喰い魔でもあるのだ。
結論から言おう。111杯完食で横綱の称号を授かり、めでたく名簿記帳の運びとなった。ちょっと誇らしいぞ!
いや、誇らしいはずであり、「すごいですね」と言われて意気揚々、のはずであった。
10分間店でダウン。張り付いた笑顔で店を出て自転車で北上川へ。ここで30分間ダウン。なぜなのだろう、不思議とお腹がとても痛い。ベンチの上で休んでいることを装いつつ、人に心配されないようこそこそ隠れるように寝返りをうった。
寒さと痛みに耐えながら暖かいお茶を買いに行こうと思いさらに10分間ほど苦しんだが、体を起こした際、ついにカタストロフィーに到達してしまった。
一気にリバース。食べ物さんごめんなさい。もう二度と意地だけのために無駄にはいたしません。そして敗北感と罪悪感が第二波として僕の体を襲った。さらに第三波は?
最後は第二波でいやな気分なのに一気に気分が良くなり、思わず笑ってしまった。
この感覚、どこか身に覚えがある。もがき苦しんで下山してみるとケロッとしてしまう高山病だ。どちらもケロッと憎らしい病気だと思う。もちろん食べ過ぎは病気以下だけど。

最後にもう一度、「ごちそうさまでした!!」。


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